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第3回 鉄道150年記念障害福祉賞

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社会福祉法人 鉄道身障者福祉協会
第3回 鉄道150年記念障害福祉賞

懸賞作品入選者発表

課題【パラリンピックが教えてくれたこと】

第一位(賞金20万円)田 畑  快 仁
第二位(賞金10万円)大 西    賢
第二位(賞金10万円)井 下  敬 翔
優良賞 鈴 木  豪 大


選評

選考委員長 伊藤 裕香子(朝日新聞社 論説副主幹)

 パラリンピックに出場した選手たちの躍動は、テレビやインターネット中継の「向こう側」の世界にとどまらない。様々に直面する壁、身の回りの挑戦と重なり、私たち一人ひとりの「こちら側」の社会とつながっている。「パラリンピックが教えてくれたこと」のテーマに、生き生きとした表現で自らの体験や思いを書き込んだ意欲作が多く寄せられた。
 選考委員が最終的に全員一致で第1位に選んだのは、28歳の田畑快仁さんの作品「盲ろう者とパラリンピック」。コミュニケーション方法は触手話という筆者は「触覚や想像力を使って世界を感じて」きた。伴走者と走るマラソンや晴眼者の後ろに乗るタンデム自転車が趣味で、自身もパラリンピック出場を夢見ている。
 「白杖を使い街を歩いていると、知らない人から声を掛けられるが、私には聞こえない」。夢の根底には、孤立しやすい困難を抱える盲ろう者の存在、触覚を使ったコミュニケーションなどを、多くの人に発信する機会にとの願いがある。当事者だけが豊かな表現で語ることができる自らの体験と気持ちを、専門知識がない人にもわかりやすい言葉で丁寧に綴った。前向きで力強いメッセージが、心に残った。
 第2位は、選考委員の支持がほぼ並んだ2作品が入った。
 52歳の大西賢さんの作品「困難の乗り越え方」は、パラリンピックをめざす車いすのタケシさんとの出会いから始まる。経済的に不遇だった若いころに取り組んだNPO団体の支援で訪れると、「ヘルパー以外の人間関係が欲しかった」と打ち明けられる。自身の内面が深く掘り下げられていく様子を具体的に描き、読み手を引き込む文章力への評価も高かった。
 もう一つの第2位「パラリンピックが教えてくれた『本当の強さ』」は、23歳の井下敬翔さんのみずみずしい文章に、一歩踏み込んだ説得力があった。聴覚障害のある両親の元で育ち、思い込みや決めつけという、障害者への「無意識な差別」を体感してきた。それぞれの強みに着目するストレングスの視点にも触れながら、「障害は、決して『劣ること』を意味しない。生き方や見え方が少し違うだけの『もうひとつの個性』だ」と記した。
 優良賞は36歳の鈴木豪大さんの「ボッチャとのであい」。自身のスポーツ推進委員の体験とパラリンピックで感じたことを重ね合わせ、「違いは不便ではなく、可能性」というメッセージを自然な言葉でわかりやすく伝えた。多様性の大切さや無意識の思い込みを実感し、さらに気づきを促す行動を実際に進めている点にも好感が集まった。
 10月、パラリンピアンで初めて、河合純一さんがスポーツ庁長官に就任した。誰もが生きやすい社会への多方面からの提言は、残念ながら受賞に至らなかった作品にもたくさん詰め込まれていた。時代も社会も、もっともっと前進していきたい。感性豊かな作品を応募いただいた皆さまに、心より感謝申し上げます。


第3回 鉄道150年記念障害福祉賞 第1位入選作品