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第2回 鉄道150年記念障害福祉賞

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社会福祉法人 鉄道身障者福祉協会
第2回 鉄道150年記念障害福祉賞

懸賞作品入選者発表

課題【進む少子化とどのように向き合っていくか?】

第一位(賞金20万円)杉 本  あずさ
第二位(賞金10万円)花 田  絵里子
第三位(賞金5万円)小笠原   彩
第三位(賞金5万円)堀 山  有里子


懸賞作品選評

選考委員長 石川 尚文(朝日新聞社 論説副主幹)

 出生率の低下に日本社会が驚いた1990年の「1.57ショック」から30年余り。少子化への対処には、なお有効な解が見当たらないどころか、日本以外でも多くの国が同様の問題の深刻化に頭を悩ませつつある。
 誰にも何らかの関わりがあるが、一筋縄では論じられない。今回はそんなテーマだったにもかかわらず、多くの方々から、難題を考える手がかりに富んだ作品を寄せていただいた。
 選考委員の多くが推し、最終的にほぼ満場一致で1位になったのは、杉本あずささんの「支えられながらも支える」だった。
 私たちは「支え合いが大事」といいながらも、つい、支える側と支えられる側の間に線を引きがちだ。しかし実は、その立場は容易に入れ替わる。
 杉本さんは、自らの体験からそのことを分かりやすく説き起こし、さらに一歩進める。「多くの人が社会的弱者の立場を経験することにより、支え合いはより上手になっていくのではないか」と。ある場面では支えられ、別の場面では支える側になる。それが当たり前の社会に、という呼びかけには説得力がある。肩ひじ張らず平易で前向きな文章も、共感を誘った。
 第2位に選ばれた花田絵里子さんの「『役割』を変えながら」の問題提起にも、1位の作品と通底するものがあった。
 脳出血で倒れ、後遺症で左片麻痺になった花田さんは、それまで担ってきた様々な「役割」の喪失感を覚える。一方で、リハビリで出会った作業療法士の働き手不足問題を知る。そこで思い至るのが、各自が置かれた状況のなかでも発揮できる「パワー」をシェアできないか、という発想だ。
 地に足のついた論考を通じて、シニア層も含めた多様な働き方の重要性と可能性に、改めて気づかされる。
 第3位には、小笠原彩さんの「自分のような思いを子どもにしてほしくない」が選ばれた。若い世代らしく、子ども時代の心情や結婚や子育てへの逡巡をみずみずしい感性で描き出している点で、多くの支持を得た。提言部分はやや一般論的だが、「親子関係」への着目と踏み込みの鋭さには、年長世代も含め、はっとさせられるはずだ。
 もう一点の第3位になった堀山有里子さんの「希望のバトン」は、自らがこれまで様々な人から受けた「恩」を、いまの世代に「送ること」の大事さを訴えている。子どもを連れた親の大変さをめぐる電車内での様々なエピソードなど、表現力豊かな文章は、応募作の中で群を抜いていた。
 選外の作品の中にも、少子化を生む日本社会の現状への鋭い批判や、人材育成などでの具体的提案があり、いずれもうなずかされる内容だった。手ごわいテーマに果敢に挑んでいただいた皆さんに、深く感謝致します。



第2回 鉄道150年記念障害福祉賞 第1位入選作品